「珪くん、モカできたよ」

が俺の「作業場」にモカをいれてもってきてくれた
俺は・・・ちょうど新しく作っている作品の
デザインを描いていたところで・・・
ドアから入ってきたのほうを見もせずに


「ああ・・・そこに置いておいてくれ」

そう言って・・・・ずっとデスクに向かっていた



はばたき学園を卒業して・・・既に3年
俺とは、揃って一流大学へ進んだ

卒業式に・・・俺がに想いを告げて
俺たちは「恋人」として・・・新しいスタートを切った

つまりそれから3年・・・
俺の中では・・・隣にがいてくれることが当たり前で
も、俺のそばにいるのを当たり前だと思っているであろう
そう・・・俺は考えていた

だから・・・休日をこうして俺の家で一緒に過ごすことも
俺にとっては自然なことで
が・・・モカを落としてくれるのも
俺がしている・・・アクセサリ作りをが眺めていてくれるのも
いわば「日常」と思っていた

たった今までは・・・・



俺は・・・デスクの上に広げたスケッチブックに
天使の羽を描いていた
柔らかな曲線を使って・・・羽の「軽やかさ」を考えて
何度も描いているけれど・・・なかなかうまく決まらない

そんなとき・・・がこう言った


「モカ・・・ここに置くから
 もう、帰るね」
「え・・?」

「珪くんは、私がいてもいなくても同じだし
 ううん、どちらかというと、私がいないほうがお仕事に集中できるんだよ
 だから邪魔なはモカを飲み終わったら、もう帰りま〜す」

俺がデスクから振り返ると・・・
は、つまらなそうにモカのカップの中でスプーンをくるくると回していた


「何言い出すんだよ?」
「だって、そうでしょう?
 珪くんは、もう、私のことなんか好きでもなんでもない
 だから、私が呼んでもこっちを見てもくれない・・・
 あ〜私は振られちゃったんだぁ〜」

俺は・・・・デスクから離れて・・・
床にぺたんと座り込んだに手を伸ばした

は・・・俺の手が触れるのを嫌がると
ひざを抱えて・・・反対のほうを向いてしまった
俺は・・・そんなを背中から抱きしめた


「ごめん・・・寂しかったのか?」
「ふぅ〜んだっ、寂しくなんかない・・・違うもん」

「おまえの事・・・放っておいたから・・怒ってるのか?」
「そんなんじゃないもん、もう、珪くんなんて知らないもん」

「何・・・拗ねてるんだよ?」

は・・俺の言葉に答えずに・・・頭を左右に振った


「いーーっだっ、何でもないもん、何でもないんだから」
「おまえの何でもないは・・・何かあるって証拠・・・言いたい事あるんだろ?」

俺は・・・の頭を抱え込んで胸にうずめると
その髪をゆっくりと撫でた
は・・・しばらくの間身体を硬くして・・・俺の腕から逃れようとしたけれど
俺が離さない事を悟ると・・・大人しくなって・・・身体を俺に預けてきた



「珪くん・・・私のことどう思ってるの?」
「ん・・・?どうって・・・それは・・・」

「珪くん、知ってる?
 お花にお水をあげないと枯れちゃうんだよ?」
「ん?ああ・・・そうだな」

「お水がないと・・・私も枯れちゃうんだよ?」
・・・?」


が言いたい事を俺が理解するまでに・・・数秒の時間がかかったけれど
つまり・・・俺の「水」が・・・には足りていない
そういう意味だと解かって・・・
俺は・・・なんでも当たり前になっていた自分を恥じた


がしてくれること・・・
がそばにいること・・・
が俺を愛してくれること・・・

本当は・・・そのすべてをきちんと感謝している
ただ・・・それを「言葉」に・・・最近していない・・

俺はの左手を取ると・・・その甲にキスを落とした


・・・好きだよ」
「・・・いいよ、無理しないでもいいもん」

「無理なんかしていない・・・おまえが好きだ」
「・・・・私は珪くんなんか、嫌いだもん」

「俺の姫は・・・おまえだけだ・・・解かってるだろ?」
「・・・・それは・・・そう信じたいけど
 そんなの3年も前にそう言ってくれただけだもん」
「俺を・・・信じられない?」

は・・・その質問には答えずに・・・
ただ、じっとしたまま・・・俺の腕の中にいた

俺は・・・にどう伝えればいいのか・・・
自分の気持ちを・・・どんな風に表現すればいいのか・・・
少し考えて・・・こう言った



・・・、左手の指輪・・・外してくれ」
「え・・・珪・・くん・・」


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